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月の乙女

月の乙女はひた走る
暗き緑の森を
深く白い林を
茂き桃色の川辺を

あの青月に手が届くまで
私は走ってゆくのだ

人々は笑う
「月に手が届くものか」
「手に入るわけがない」

それでも乙女はひた走る

弱心から生まれ出ずる
小さき鬼達を引き連れて
ただ一点を見つめ
月の乙女はひた走る

小さき鬼達は時折耳元でこうささやく
「ほら、月はあの女を照らしているよ」
「ほら、月はあの娘が見上げると喜ぶんだよ」

乙女ははたと足を止め
胸を痛ませ涙を落とす

小さき鬼はその涙を食べ
どんどんと大きくなってゆく

もっと涙を食べようと
鬼は悪意に満ちた冗談をとばす

しかし乙女は顔を上げ
月を見つけたその日を思い出す
そしてまぎれもなくあの青月は
こちらを照らしてくれているのだと
信じて再び走り出す

見上げれば雲は去り
鈴の音が響く夜

あのおかのさきへ行けばきっと手が届く
あの川辺に立てばもっと近くで眺められる

強く信じるその心に
いつの間にか鬼は振り落とされ
乙女はひとり夜道を走る

さあ、乙女よ振り返るな
走るその先に青月は待っている

触れて息絶えることになっても
後悔することはないであろう

稲光のような強い光か
柔らかく包み込むような光か
そこまで行かねばわからない

ただ決心の足跡がそこにはある
青月が照らすその長い道に

by 93hossy | 2012-09-10 03:51

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