人気ブログランキング | 話題のタグを見る

旅の覚書・2

6月9日。
メインの展示をみにいく!朝から気合が入る。

国立新美術館は、まだ2度目。
六本木の駅から少し歩くと見覚えのあるガラスの津波が横になったようなデザインが見えてくる。

10時少しすぎだというのに、もう人がぞくぞくと入っていっている。

まずはオルセーを。
実を言うと、前評判も散々聞いていたし、知人で観にいく人もいるにもかかわらず、
あまり期待していなかった。私はともかくルーシー・リーを!!というので頭が一杯だったから。

でもね、ごめんなさい。やっぱりいい絵は人をひきつける。
セザンヌの静物画、何度も画集でみたはずなのに、その前に立ち尽くしてしまった。
桃色とブルーグレーの何度も重なり合った地色は、夕刻の展示場の壁を思い出す。
ゴッホの夜の風景にはなぜか涙がこみ上げた。
自分の苦しい時代、海辺に立ち尽くして見た風景を思い出したのだ。
ルソーもロートレックも、有名すぎてふんふんと思っていたのは大きな間違い。
自分の一部を投影できる、あるいはしてしまう力を持っている。
会場にいる人たちもそれぞれ立ち止まり、空を見つめ、また絵に見入っている。
ごちゃごちゃにごった返してはいたけれど、そこにはたくさんの小さなドラマがあったに違いない。

たっぷりたっぷり時間をかけてみた。

ナビ派と呼ばれる画家たちが思わずよく、何度も戻ってはみてしまった。
不勉強な私は、初めて聞く名前の画家も多かった。
みたものを平面的に処理し、線を強調して画面を作り上げてある。
熊谷守一を思い出していた。ああ、それで心惹かれたのか。

へとへとになる一歩手前で会場をあとにした。
昼食は、ポール・ボキューズでランチをとる。
豚肉のブレゼはほっとする料理で、
たくさんの人の話し声や食器のなる音などとともに、しっくりとお腹に収まった。
でもね、やっぱり私はコパンの料理を思い出していた。

気を取り直して午後はルーシー・リー。
去年は雰囲気作りを重視した展示だったので、それはそれで楽しめたけど、
やや不満足に終わった。(21-21デザインサイト)
今年はどんなだ??

一つ一つにしっかりと空間をとってあり、光もあたっている。
あー、こういう風にどこもかしこもみてみたいのだ!そうそう!

いかにも焼き物を作っている人がそこかしこに(笑 いるいる。
ぐーっと身を傾けて、腰のラインや高台、釉薬のたれた具合や線の処理、
ありとあらゆる情報をつかみたい!と身体中から光線の出ている人がたくさん。
私ももちろん、その仲間(笑

少し離れて雰囲気もみてみたい。

品があって、繊細だけれど、芯の強いもの。

いかにもルーシー・リーその人、そのものなんだろう。

音楽も絵画も彫像も焼き物も、作り出されるものにはその人がそのまま映し出される。
私をみてください、といっているようなもの。

こうやって死後もたくさんの人に愛される作品を作れたこと、
彼女は今どんな風に感じているだろうか。

と、ある大鉢の前で、横顔に見覚えのある人が立っている。
・・・・・まさかね、こんなところで会うわけない。

次のコーナーでその人が振り返る。
「あ!」・・・・・やっぱりそうだった!
窯業大学校時代の先輩だった!
互いに連絡を取り合うまでの仲ではなかったので、
卒業後どうされていたのかほとんど知らなかった。
こんなところで会うなんて!

近況を語り合い、がんばりましょう!と別れた。
思いがけない出会いで、興奮してしまった。
みんなそれぞれがんばっている。それがうれしい。

何度も何度も出口まで行ってはもどり、おなか一杯になるまで観てまわった。
作りたい気持ちは充電されてきている。
帰ったら、あれも、これも、早くとりかかりたい!


夜は分とく山。
清水の舞台から飛び降りてでも食べてみたかった料理。
これはまた番外編で。
旅の覚書・2_f0143299_21444354.jpg

by 93hossy | 2010-06-13 21:44 |

<< 旅の覚書・3 旅の覚書・1 >>