tourner

今回の個展のタイトル、tournerについて、
まだ書いてなかったなあ、と思い立ち、書く事にしました。

まず中尾さんに「テーマは何にしようか?」と聞かれたとき、
最初に浮かんだのは、「めぐる」という日本語でした。
これは、この展示のために考えていることではなくて、
もう数年前からずっと常日頃考えていることのひとつです。

一粒の水滴は岩肌を湿し、それは地下水となって湧き出てきます。
小さな小川だったものが大河となり、海へと流れ出していきます。
海の水は太陽のエネルギーを浴びて蒸散し、雲となり、再び水滴となって地上に降りていきます。

私たちは、この大きな循環の中で生きています。
その恵みを毎日受けながら、時折牙をむき、跡形もなく奪い去る自然に畏れを抱きながら生きています。

自然は両極の顔を持っており、奪い去ったすぐあとに、何事もなかったかのように
再び温かい恵みを授けてくれます。
私たちは、この循環から逃れることはできません。
ごくごく小さな砂粒のような存在なのだと思います。

ここ数年、私は落雷や地震、水害といった災害に翻弄されながら、
このようなことを考えるにいたりました。
勿論、きっかけは東日本大震災でした。

自然の大きな循環もさることながら、人との関わりの中にある大きな循環もまた、
ここ数年、考え続けていることでもあります。
自分が相手に直接何かをしたわけでもないのに、困っているときに一気に助けに来てくださった方々がいらっしゃいます。
そんな時、ああ、きっとご先祖様は困っている人に手を差し伸べて生きてきたんだな、と感じるのです。
そうやってかけてくれた情けが今、こうして私に巡ってきている。そんな気がしたのです。

私は、ひとりで生きているようで、実はまったく一人ではない。
自分のルーツである人々がやってきたことを知らないうちに巡らせながら、つなげながら生きている。
自分はその小さなつなぎ目のひとつで、なくてはならないものなのだ。
そんな風に思えるようにもなりました。

器を作ることについても、いつも思考はめぐっています。
唐津の師匠のもとを、弟子離れするとき、師匠にこう言われました。
「唐津という土地を離れたら、唐津焼ではないからな」
こう言われて、その時すごくとまどったのを憶えています。
では、好き勝手にやろう、と、まったく唐津っぽくないことを最初はやっていたように思います。
でも、やっぱり私の根っこは唐津にあるのです。
結局、時々、舞い戻るのです。
あの、濃い二年間で叩き込まれた唐津の技術、おおらかさ、素朴さ、そんなものが
私の根っこになっています。

普段あれこれと考えを巡らせていることを、
めぐる、という言葉でくくってみようと思いました。
ですが、自分にとってはなんだかものすごく語感が強く、
もっとソフトに表現できないものか、とは、なかおさんも思われたようで、
「フランス語でいい表現、ないかしら」とヒントをいただきました。
そこで、山鹿のビストロ シェ・ル・コパンのマネージャーさんである田中裕子さんに相談しました。
コパマネさん、実は現役のフランス語翻訳者でもあります。
すると、すぐに返事がかえってきました。
以下、コパマネさんとのやりとりを引用しながらまとめたことです。


フランス語は、たとえば英語などと比べると極端に単語数が少なく、つまり一つの単語がものすごくたくさんの意味、幅広いニュアンスをもって使われているのだそうです。

辞書によれば、tournerの意味には、1)回す(回る)、2)こねくり回す(検討する)、3)〜のほうへ向ける(考え、顔、視線などを)、4)裏返す(ページをめくる)、5)巻く、6)ろくろで加工する(!)、7)曲がる(曲げる)、8)撮影する(映画に出演する)など、非常に多様な意味を含んでいます。

ろくろはフランス語でtour(トゥール)。
そしてtournerの語源はラテン語のtornoなのですが、そのtornoの意味は"tourner(回す)"と"faconner(形作る)"。
つまりラテン語において、「回す」こととは、イコール「形作る」ことであったようです。
フランス語では、ろくろを回すこともtourner、自然が循環することもtourner、思考を巡らすこともtourner、すべて同じ動詞を使えます。


この他にも提案してくださったのですが、この、tournerの意味の広がりが、
自分が考えていることをふわっと包んでくれるような気がしたのでした。
こうして、タイトルが決定しました。

いつも、このブログを読んでくださっている方は、
私がこんなふうにぐるぐる考えていることをよくわかってくださっていると思います。
今回初めて作品に出会っていただいた方にも、ぼんやりとわかっていただけたのではないでしょうか。

ぼんやりと、でいいのです(笑
私自身が常に変化し、アメーバのように形を変えながら思考を巡らしているからです。
しかし、根幹は変わらない。
今回の展示は、自分にとってもとても意義深いものとなりました。
見に来てくださった方、感じてくださった方、本当にありがとうございます。

個展はあと二日、明日まで、佐土原のなかお画廊にて開催しております。
皆様のお越しをお待ちしております。
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by 93hossy | 2013-12-01 11:32 | | Trackback | Comments(0)

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